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政治経済の動き

世界と日本の政治経済の考察

対ロシア北方領土返還交渉

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戦後最大の政治経済ゲーム

安倍首相はロシアのウラジオストクで開催された東方経済フォーラムに出席し、ロシアのプーチン大統領に日ロ首脳会談を年1回、定期的に開くことを提案し、大統領もこれに同意した。

 

首脳会談で日本側が具体策として極東のエネルギー開発や医療支援など8項目の経済協力を提案した。首相は更に日ロの経済が補完関係にあることや、中小企業同士の協力、極東地域をアジア太平洋の輸出拠点する案など、多くのロシア側が喜ぼそうな提案をした。

 

特定の都市での首脳会談の定例開催は異例である。プーチン政権にとって、発展著しいアジアに近接しながら、人口が少なく進展が遅れている極東の開発は最重要課題であるだけに、日本としても経済協力を通じて極東を重視する姿勢を示す狙いがある。

 

北方領土の歴史

領土問題の発端は第2次世界対戦の最後の日に旧ロシアが北方領土である択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の島々を奪ったことにある。

 

松前藩は1635年に樺太調査を行っており、作成した地図には北海道本島、樺太、千島列島の他、国後島や択捉島も記載されている。従って、歴史的に見れば明らかに日本の領土である。

 

1945年2月ソ連のヤルタで米、英、ソ連の首脳が会談して、日本を早期に敗戦へと追い込むため、ドイツ降伏後、速やかにソ連が対日参戦することと、その見返りとして、南樺太をソ連に返還し、千島列島をソ連に引き渡すべきと協定を結んだ。1951年のサンフランシスコ講和条約で、日本は千島列島を放棄した。

千島列島の範囲

サンフランシスコ条約起草国である米国は北方領土は常に日本の領土であったので、日本に主権があることを支持している。

 

平和条約の締結交渉は、北方領土の全面返還を求める日本と、平和条約締結後の二島返還で決着させようとするソ連の妥協点が見出せないまま、結局日ソ平和条約は締結されず、締結後に歯舞群島・色丹島をソ連が日本に引き渡すと記載された条文を盛り込んだ共同宣言で決着した。

 

交渉相手のプーチン大統領

プーチン大統領の支持率は2014年3月のクリミア併合から上昇し、以来、80%台以上を維持してきた。最近の調査でも85%の国民が大統領を支持し、不支持は14%にすぎない。

 

ウクライナ情勢に対する欧米の経済制裁や、ロシアの主要輸出品である原油安のためロシア経済はどん底であるが、政権の求心力には失われていない。

 

実質的に国営のメディアによる政権寄りの報道や治安機関による反対勢力による政権批判を徹底的に封じたにより、大統領の高支持率を維持している。

 

安倍首相の戦略

産経新聞などが8月2日に行った、世論調査によれば、安倍政権の支持率は55・4%となり、前回調査(7月16、17両日)から5・6ポイント上昇、3カ月ぶりに5割を超えた。不支持率は6・0ポイント減の33・1%だった。更に、続投を望む割合は7割以上を占めていることがわかった。このような国民の政権に対する高支持率を背景に、米国の反対を押し切ってでも、ロシアに対して経済支援をセットにして、日本国民の悲願である北方領土の返還交渉を精力的に行うことが出来る。

 

安倍政権は、プーチン大統領の高支持率とどん底に有るロシア経済に着目して、今が交渉を進める絶好の機会だと考えている。ロシアにとって魅力的な経済支援をすることにより、プーチン政権やロシア国民が北方領土の日本への返還に応じる環境を整えようとの思惑が有る。

 

安倍首相は新たにロシア経済分野協力担当大臣を世耕経済産業大臣に兼務させ、更にウラジオストクで毎年、首脳会談を行うことも提案し、プーチン大統領はこれを受け入れた。

 

更に、安倍首相は12月に安倍首相の地元の山口県長門市でプーチン大統領と首脳会談を開くことを合意したことを明らかにしている。アメリカの大統領選挙が11月に行われ、アメリカ政府からの圧力がかからない絶好の時期を狙ったものと思われる。

今後のシナリオ

ロシア側は中国との関係から日本に急速に近づくことはないが、しかし、中国との経済関係は良好とはいえず、ロシア経済を立て直すには日本の支援は不可欠である。

 

更に、欧米がロシアに対して、経済制裁を課している時期に、日本がロシアに近づくことにより、ロシアは欧米を牽制できるわけである。

 

ロシアでは日露不可侵条約の一方的破棄やシベリア抑留など、ロシア側に都合の悪いことはロシア国民に教えていない。ロシア国民の多くは日本が北方領土を要求するとは不当であると考えている。従って、プーチン大統領が北方領土の返還に応じると支持率低下につながる。

 

ロシア人の対日感情は非常に良く、日本人に対するリスペクトは非常に高い。

 

日露両首脳の信頼関係の構築、経済協力が成功し、ロシア国民が日本に感謝するようになって、更にロシア側が日本を重視して初めて領土返還交渉が動き出すものと思われる。

 

まとめ

北方領土交渉はこれまで70年かけても解決しなかった。このたびの絶好の機会でも、複雑な国際政治と経済問題が影響して、目論見通りに交渉が進むとは思われない。交渉進展には、更に長い年月が必要である。