一老人の思い込み

老人の目から見た日本と世界

中国資本を使ったイギリスの原子力発電所新設問題

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安易な国防政策、エネルギー政策は国力を低下させる。

 

英国原子炉建設プロジェクト

英国のメイ首相は9月15日、フランスの電力公社EDFが主導し、中国企業が出資する原子力発電所建設計画の着工を条件付きで承認した。

 

英国南西部ヒンクリーポイントで新設されるこの原子力発電所は総工費240億ドルのプロジェクトで、英国政府はこれを承認したが、原発の稼働前と後にEDFの権益の売却に介入できるという新たな条件を設定したことを声明で明らかにした。また、今後の原発建設計画について、政府が特別な権益を取得できるものとし、政府の承認なしに大規模な権益を売却できないようにする方針である。

 

この原子力発電所は採算性、中国資本の導入、実際に稼働するか不明である点から物議をかもしだしていた。

 

プロジェクトの背景

多くの問題を抱えているにもかかわらず、英国政府が承認した背景には、このプロジェクトが単にエネルギー問題ではなく、英国の核抑止力を強化するための内密のプロジェクトであるからである。

 

EPR原子炉

この発電設備は2025年に完成し、英国で必要な電力の約7%を賄う予定である。原子炉を設計するフランスの国営企業のであるアレヴァによれば原子炉は信頼性、効率、安全性が高く、航空機の衝突に耐えられる設計であると言っている。

 

現在この型の原子炉は実際には稼働しておらず、フィンランドとフランスで開発が進んでいるだけであるが、工事は予定より大幅に遅れている。すでに数十億ドルの費用を使っており、多くの問題を抱えている。

 

英国でのプロジェクトの建設と稼働には220億ドルもの巨額な費用を必要とする他、EPR技術が実現可能かも不明である。

 

その一例として、ヒンクリーポイントCの原子炉の炉心を保護する圧力容器で使用される部品に皮膚描記症割れが見つかっており、対策に時間がかかっている。ケンブリッジ大学の原子力技術者は2014年にEPRは製造不可能であると宣言している。

 

今年、EPRの主製造会社であるEDFの労働組合はヒンクリーポイントのプロジェクトは会社を倒産させるリスクがあることを表明している。更に、このプロジェクトが社に多大な損失を被らせる恐れがあるとして、EDFの最高財務責任者が辞任している。

 

中国資本の取り込み

しかし、このような状況にもかかわらず、英国政府は建設費用を度外視してプロジェクトを遂行している。

 

費用の約3分の1を負担する見返りに、中国国営企業の中国広核集団はプロジェクトの所有権の約3分の1を所有する。(EDFが所有権の残りを所有する。)英国政府は更に暫定的にロンドン北西のブラッドウェル・オン・シーに中国企業による設計で、未だ実績のない原子炉建造を承認している。

 

中国のこれらのプロジェクトへの参入は、中国の原子力の国際市場の参入への大きな一歩となる。しかし中国企業の英国への資本参入は、英国にとっては大きなリスクである。中国は長年に渡り、英国の競争相手国でであるにも関わらず、中国国営企業に英国の電力網にアクセするとことを認めたからである。

 

英国政府の過度の負担

英国政府はヒンクリー・プロジェクトへの出資企業に対して35年間にわたり1メガワット/時あたり115ドルを支払うことを保証している。この金額は現在の電気価格の約2倍であり、国際再生可能エネルギー機関が予測しているほぼすべての再生可能エネルギーの価格より割高であり、再生可能エネルギーは今後、数十年で低下することが予想されている。

 

電力の市場価格がこの水準を下回ると、英国政府はこの差額を出資企業に支払う契約である。すなわち、この費用は消費者に転嫁される。契約が締結されて以来、電力価格は低迷している。今年の夏、英国政府は契約に基づいて支払わなければならない費用は370億ドルに達すると算定している。

 

英国政府の目論見

英国政府が非常に不利な条件で中国国営企業と契約を行った背景に、英国の軍事プロジェクトが関係している。とりわけ、旧式で改修の必要のあるトライデント原子力潜水艦隊との関連が疑われている。英国の保守派はトライデントは英国が国際的影響力を維持するためには不可欠であると考えている。

 

サセックス大学の研究所が公表した英国の軍事政策に関する報告書は、強固な民間原子力産業は英国の原子力潜水艦プロジェクトに不可欠であると述べている。一方、報告書は、原子力潜水艦隊を新たに建造する高額な費用を民間の原子力プロジェクトに紛れ込ませていると疑っている。

 

原子力の研究開発や訓練計画を民間と軍で共同して行えば軍事支出を大幅に削減できるからである。優秀な原子力技術者を確保することが出来る他、ほとんどの原子力計画の長期のリードタイムや立ち上げ時間や寿命のことを考えれば、民間と軍事計画が連携できれば、企業は積極的に投資することが可能になる。

 

英国政府はヒンクリーポイント・プロジェクトを使って、中国から巨額な資金を集め、中国を抑止するためのステルス潜水艦の建造を計画していると言うことが出来、英国政府は潜水艦計画の資金を捻出するために巧妙な手段で民間の原子力エネルキー・プロジェクトを利用したことになる。

 

2015年に英国政府はトライデントによる抑止力を更新するためには約385億ドルの費用が必要であると見積もっている。

 

問題点

ヒンクリーポイントCのような多くの疑問が持たれ、破綻が予想されるプロジェクトを推進させて、トライデントなどの軍事プロジェクトの費用を捻出する目論見は防衛と民間エネルギーの両方の政策に害を及ぼすことになる。

 

英国政府は軍事予算をエネルギー予算にすり替えるのではなく、再生可能エネルギーの利点を確認して費用、実現可能性、環境利益、及び安全面についての厳密な比較を行わなければならない。

 

英国の防衛政策が国のエネルギー政策に影響を及ぼすべきではない。これは、国の安全に関わる問題である。