一老人の思い込み

老人の目から見た日本と世界

ギャラクシー・ノート7販売中止 ― 新製品がサムスンの首を絞める

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サムスンの社風がもたらした経営危機

 スマートフォンの発火、発煙事件

韓国サムスン電子は10月11日、バッテリーの爆発や発火が相次いだ新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」の販売を世界各国で当面中止すると発表し、利用者には、電源を切って使用を見合わせるよう要請した。リコールで交換した製品でも発火や発煙が相次いでいた。

 

ギャラクシーノート7は8月に韓国や米国などで発売後、発火や爆発などのトラブルが報告され、バッテリーの欠陥が判明した。サムスンは9月に世界で250万台規模のリコールを実施し、10月からは韓国などで販売も再開していた。

 

だが、米国の旅客機内で、交換した機種から発煙する事故が発生した。米携帯電話大手は欠陥機の代替品への交換や販売を停止するなどの対応を取っていた。

 

韓国のマスコミは「数カ月過ぎても原因も見つからないことで消費者を失望させることだけでなく、会社の信頼を失墜させている」とし、「屈辱」であるとさえ報じた。

 

サムスンの今年7から9月期決算は、半導体部門が好調でスマホ問題の悪影響をカバーしたが、販売中止が長引けば、業績への影響も避けられないもようである。

 

サムスン社内での動き

今年8月にノート7が自然発火する問題が起こると、サムスンは社を上げて対応を協議した。まず、数百人の技術者により問題の解明に着手した。

 

短い調査期間でもあり、技術者たちの誰もが発火につながるノート7を見つ出すことができなかった。サムスンの技術者たちは結論として、発火原因は電池の欠陥によるものだとの結論に至った。

 

9月に、サムスンはノート7のリコールを発表した。このときは、電池を他のメーカのものに交換して出荷を再開した。

 

事故の再発

しかし、問題は電池の交換では解決しなかった。電池を交換した製品でも自然発火が起こってしまった。社の技術者は一から検査をやり直すことになった。この時も、技術者は誰ひとりとして、発火を再現することができなかった。すでに手遅れであった。サムスンはノート7を完全に販売中止にした。

 

サムスンの業績への影響

サムスンは約2ヶ月の業績低下を覆い隠しており、アップルのアイフォーンのライバルである製品について、投資家、安全性検査機関、および消費者から社の信頼性について、手厳しい攻撃にさらされている。

 

サムスンのスマートフォン事業は他の部門からコンピュータチップや液晶パネルを使用することにより、他の部門の業績に貢献している。

 

信用回復への長い道のり

ノート7の販売を中止しても、サムスンが直面している問題が解決するわけではない。サムスンはノート7の発煙、発火の原因を特定していない。更に、原因の解明に至っているかについても明らかにしていない。サムスンは他の製品についての安全性についての問題にも直面することになる。

 

サムスンがノート7の大失態から早急に立ち直れるかどうかは不明である。最も心配しなければならないことはサムスンのブランドの信用が失われた事を意味する。

 

ノキアが世界のトップメーカーの座から転げ落ちるのに長い歳月を必要としなかったことをサムスンは認識しなければならない。

 

サムスンの経営判断

ノート7は8月に発売され、評論家から高い評価を受けていた。公開前に、サムスンは数百人のユーザを使ってベータテストを行った。このときは、発火につながるような異常は見つからなかった。

 

サムスンの最大のライバルであるアップルは9月に新型のアイフォーンを発表した。サムスンは新機能をノート7に詰め込んでアイフォーンに対抗しようとした。

 

業界の専門家はサムスンのサプライチェーンに問題がある事を指摘している。市場投入を急がせたあまり、技術的問題が生じたか、手抜きに繋がったものと推測している。

 

原因はサムスンの社風にある

サムスンでは、軍隊式の命令系統が採用されており、優秀な技術者でも技術を知らない幹部の命令に従わなければならないのである。経営幹部は製造現場で起こっていることにもっと熟知している必要があった。

 

この度のサムスン危機は経営幹部により作られたものである。経営幹部はノート7発火の原因を電池にあると安易に結論を下してしまったからである。

 

数百名のサムスンの技術者がノート7の問題を突き止めようと努力したが、訴訟や監督官庁の介入を恐れて、経営幹部は技術者同士がメールで連絡を取ることを禁止した。そのため、技術者は互いに連絡を取る事ができず、問題を解明することができなかった。

 

サムスンの技術者は何事が起こっているかが分からず、問題を再現することができなかった。製品の半導体基板に問題があるなら問題は短時間に、容易に突き止めることが出来たはずである。

 

経営判断により、現場の意見が反映されずに、ノート7は従来の製品より多くの機能をもたせたため、構造が複雑になり過ぎてしまった。それで、制御不能になってしまった。