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政治経済の動き

世界と日本の政治経済の考察

アメリカ司法省によるFBIの調査

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アメリカ大統領選への干渉についての調査 

FBI長官による大統領選の介入

アメリカ連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミーFBI長官は、任命権者のオバマ大統領を始め政界からの評価も高かった。しかし、FBIの長く守られてきた伝統に反して大統領選挙に介入してしまった。

 

コミーFBI長官は昨年10月下旬に議会指導部に送った書簡の中で、大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏が国務長官時代の公務に私用メールを使っていた問題について、一度は終結していた捜査に関連する可能性のある電子メールが新たに多数見つかったと公表した。

 

これらのメールは、クリントン氏の選挙本部の副代表であるフーマ・アベディン氏の別居中の夫で、下院議員を辞職したアンソニー・ウィーナー氏のパソコンから見つかったとされていた。

 

大統領選挙投票日の11日前に、メール問題の再調査についての議会への書簡提出の決定はコミーFBI長官によりなされた。しかし、FBIのメールの再調査の結果は白であった。

 

大統領選の対立する共和党候補のドナルド・トランプ氏は、クリントン氏を激しく非難して、クリントン氏優勢の状況を反転させることに成功した。

 

FBI長官に対する非難

クリントン氏は、選挙直前になってメールの存在を公表したコミーFBI長官の判断は選挙介入であると批判した。民主党のハリー・リード上院院内総務はコミーFBI長官に対して、自らの立場を利用して特定の候補に有利な状況を作り出したとして、法律違反であると警告した。

 

司法省はコミーFBI長官が議会に対し新しい電子メールの存在の公表することを阻止できなかった。

司法省によるFBIの調査

アメリカ司法省監察局は1月10日、コミーFBI長官が昨年10月に議会に対し行ったクリントン氏のメール問題についての再調査の決定通知について調査を開始することを明らかにした。

 

今回の調査は、議員と国民からの申し立てに基づいて、FBIと司法省の大統領選期間中の行動における政治的動機が調べられる。

 

この調査はコミーFBI長官に対する痛手にとどまらず、FBIに対する信頼の喪失につながる可能性がある。

 

司法省による今後の調査

監察局の声明では、コミーFBI長官の行動が違法であるとは述べられてない。問題はコミーFBI長官の行動がが不適正であったかどうか、誤った判断がなされたか、司法省のガイドラインに違反していたかどうかである。

 

監察局は他の疑惑についても調査対象にあげている。FBIの副長官の妻がバージニア州の民主党からの上院議員候補であったため、副長官は忌避されるべきであったとする疑惑。司法省の高官がクリントン陣営への情報提供を行っていたとされる疑惑。これらの疑惑についての調査が行われることになる。

 

監察局は司法省の議会広報責任者のピーター・カッドサイク氏が不正に情報をクリントン陣営に漏らした容疑で捜査を行っている。ウイキリークスで公表されたメールからカッドサイク氏がクリント氏議会の公聴会の計画の変更を行ったことが判明している。

 

調査結果が政界にどのように波及するかについては現在のところ不明である。監察局は違法の証拠を発見した場合、犯罪捜査を指揮することになる。

 

司法省とFBIの方針と政権の認識

司法省とFBIには犯罪捜査について長年に渡る方針がある。更に、司法省は政治を捜査に介入させないと宣言している。これまで、民主及び共和の両政権は司法省やFBIの犯罪捜査に対して、いかなる政治の関与も禁止されているとの共通の認識を有してきた。

 

通常、FBIは大統領選には干渉しないことになっているが、クリントン氏のメール問題の捜査に長期間を要していまい、結局、FBIは中心的となって大統領選挙に干渉してしまった。

FBI長官のトランプ候補への負い目

コミーFBI長官の大統領選挙への干渉と取られる行動は両党の議員から激しい批判を受けた。他方、トランプ氏からはFBIがクリントン氏に刑事責任を追求しなかったことを非難した。

 

FBIへの調査

近年、監察局はFBIが行ってきた多くの活動でFBI自身が引き起こした犯罪に対する告発を調査している。コミーFBI長官がメール問題が加わることにより、1月10日に発表された調査はより徹底したものとなる可能性がある。

 

FBIの威信回復

今回の調査には期待が寄せられており、たとえ調査に時間がかかっても、政治に中立な機関としてFBIの信頼を取り戻す最初のステップとするべきである。

 

視点

  • 次期司法長官はトランプ氏により任命されることから、大統領就任後は司法省とFBIは政権により多大な圧力を受けることになり、調査は立ち消えになる可能性が高い。
  • 大統領選挙に関する調査は政権の圧力を避けるため、司法省ではなく議会で行うべきである。 

 

参考資料:"Comey Letter on Clinton Email Is Subject of Justice Dept. Inquiry", New York Times 2017-1-13